職員でも意外に知らない、「使える!」休暇・休業制度についてお伝えします。
- 妻の出産に付き添うための休暇や、出産に伴い上の子の面倒をみるための休暇制度
- 子どもの病気や健康診断のための休暇制度
- 配偶者が外国勤務や留学した場合に同行するための休業制度
- 大学や大学院等での学び直しや国際貢献活動のための自己啓発休業制度
この記事を書いているのは、関東地方の県庁で、主に産業労働分野で30年間働き、独立したキャリアコンサルタントです。
長年、公務員として働いているにも関わらず、役所野中での知らない制度も多いものです。
私自身も、公務員生活を数十年過ぎてから、「こんな制度があったんだ!」「あの時申請しておけばよかった!」と思うようなこともありました。
また、骨髄等提供休暇やボランティア休暇などの社会貢献型の休暇なども、知らなかったり使わなかったりということも多いようです。
もくじ
- 1 意外と知らない休暇休業制度
- 2 知っておいた方がいい休暇制度の留意点
- 3 まとめ
1 意外と知らない休暇休業制度
① 妻の出産や上の子の養育のための休暇制度
出産する本人の産前産後の休暇や、育児休暇制度などは当然ですが、そのような時に、配偶者である夫も休暇が取れることも知っていましたか?
妻(事実婚も含みます)が出産する場合に、配偶者である男子職員が付き添いなどをする場合には、2日まで特別休暇が認められます。1日ずつ分割することもできます。
また、妻の出産に伴って、今いる上の子など(妻の連れ子も可)の養育をするための特別休暇も6日まで認められます
② 子どもの看護のための休暇制度
小学校就学前までの子が、怪我や病気のために世話をする必要があったり、予防接種や健康診断に連れていかなければならない時の休暇制度もあります。
この場合、年5日まで休暇を取ることができます。子どもが2人の場合は年10日です。
申請をめんどうに感じて、つい年休で済ませてしまうこともあるかもしれません。
子どもが小さい頃はしょっちゅう熱を出しますし、そんな時、保育園は預かってくれないこともあり、途方にくれてしまいがちです。

貴重な年次休暇を有効に残しておくためにも、遠慮しないでこのような休暇制度を使いましょう。
③ 配偶者の転勤に伴う休業制度
職員の配偶者(事実婚を含む)の外国への転勤や留学の場合、一緒に同行するために取得できる休業制度です。
仕事と家庭を両立させることを目的とした、配偶者同行休業の制度です。休暇でなく休業です。
職員からの休業申請を受けて、任命権者は、公務の運営に支障がないと認めるときは、条例で定めるところによって、職員の勤務成績など考慮したうえで、3年を超えない範囲で認めることができるものです。
休業している職員は、その休業を開始した時の職を保有したまま職務には従事しないというかたちをとります。
ただし、その休業期間は給与の支給はありません。
④ 自己啓発のための休業制度
職員が自らの意思で、職務遂行にあたっての能力向上に役立つ研鑽を推奨、促進するための休業制度です。地方公務員法では、「就学部分休業」と「自己啓発休業」を定めています。
● 就学部分休業
職員が大学などの教育施設での修学のために、1週間の勤務時間の一部について勤務しないことが認められる休業制度です。
公務の運営に支障がなく、かつ当該職員の公務に関する能力の向上に資すると、任命権者が認めた場合に限られます。
これは休暇でなくて休業制度なので、もちろん、勤務しない時間についてはその分、給与は減額されます。
● 自己啓発休業
職員が、3年を超えない範囲で条例で定める期間、大学等の履修や国際貢献のために適当と認められる場合に認められる休業制度です。当然、休業期間は給与の支払いはありません。
私の周囲にも、この制度を活用して大学院に通い、経営学修士号(MBA)を取得した人や、海外でボランティア活動をする職員もいました。

2 知っておいた方がいい休暇制度の留意点
① 年次有給休暇における「時季変更権」
いわゆる年休です。
公務員の場合、労働基準法の最低限の定めを超えて優遇されていて、採用された最初の年から20日の年次有給休暇が認められているのが通例です。また翌年への持越しもできますよね。
一般に、「年休は休む理由も言わなくていいし、いつでも自由に取れるもの」と思っている方も多いかもしれません。
ただ、年休は、あくまでも業務が正常に運営されるという前提で認められるものなので、その取得の目的が業務の正常な運営を妨げることであるときは、取得が認められないことになります。

例えば、同じ職場で複数の職員から同時期に申請が出され、業務運営に支障が出ることが予想される場合などです。
そのような場合、使用者には「時季変更権」というものがあり、申請された休暇を認めないという権利があります。
上司から「この年休、少し日をずらしてもらえないかな?」などと、頼まれる場合も稀にあります。
上司からの「時季変更権」が頻繁に使われることは少ないとは思いますが、知っておいてほしいことです。
② 病気休暇における給与の減額
病気休暇は、職員の怪我や病気の療養のための最小限度の期間について認められる休暇制度です。
対象となる病気には、予防注射による発熱、生理に伴う就業困難、予後のリハビリも含まれます。
事前申請による承認が必要です。病状を確認する必要があるときには、診断書などの提出を要する場合もあります。ただし女性職員の生理休暇の場合は必ず承認しなければなりません。
病気休暇の期間についての制限はありませんが、遠隔地手当などの特殊な勤務手当は支給されません。
給与面では、私傷病による病気休暇が90日(結核疾患は1年)を超えるまでは給与の全額が支給され、それを超えるときは、給与の半額が減額されるのが通例です。
なお、職員が病気により、それが治癒しても職務を遂行できないことなどが明らかになったときには、「分限免職」(いわゆる解雇に相当するもの)が行われます。
③ 特別休暇いろいろ
特別休暇は、選挙権の行使、結婚、出産、交通機関の事故その他の特別な事由の場合について条例、人事委員会規則、任命権者の規則で具体的に定められています。
例えば次のようなものがあります。
裁判所の承認としての出頭など、骨髄液の提供、ボランティア活動、忌引、夏季休暇、災害による住居の重大な被災、災害のための交通途絶による出勤不能など。
3 まとめ
上に挙げたものは、一般的な休暇休業制度なので、どの自治体にもあるものです。
具体的な制度の運用面については、例えば「〇〇市一般職員の休暇に関する条例」や細かな規定が必ず定められていますので庶務や人事課等へ確認してみてください。
職員自らの意思に基づく自己啓発に関する休業制度については、例えその間給与が停止することとなっても、特に若手の皆さんには積極的に挑戦してもらいたいと思います。
子どもができたり、住宅ローンを組んだりした後では、無給の休業制度を使うのは比較的難しいかもしれませんよね。
「人生100年時代」。
職場以外での学び直しや、いったん職場を離れての体験は、退職後でも生涯失われることのない貴重な財産として、自分自身を支えてくれるものなるはずです。
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