定年後に再任用職員として働く際の留意点【ミドル層公務員の方むけ】


こんな思いを持つミドル層の公務員の方にお伝えします

  • 将来は再任用職員として働くと思うが、自分自身のこととなるとまだ実感がない。
  • 再任用職員として生き生きと働いている人をあまり見ないので少し不安になる。
  • 本当は再任用で働きたくないけれど、年金までのつなぎとして仕方ないか。

この記事を書いているのは、関東地方の県庁で30年間公務員として働き、独立したキャリアコンサルタントです。

県庁では、日々複雑な気持ちを抱えながら働く再任用職員の方と一緒に仕事をしてきました。

今回は、地方公務員の再任用制度の概要と諸課題について、主に再任用職員の立場からお伝えしていきます。

もくじ

  • 1 地方公務員の再任用制度について
  • 2 再任用職員をめぐる職場の声
  • 3 再任用職員の「心持ち」の整え方(提言)
  • 4 雑感


1 地方公務員の再任用制度について

① 制度の成り立ちと現状の運用

平成13年度に公的年金の基礎年金相当部分の支給開始年齢が65歳に引き上げられました。これに合わせて地方公務員法(28条4)にも「定年退職者等の再任用」条項が追加されました。

さらに平成25年から、公的年金の報酬比例部分の支給開始も65歳からとなりました。

これを契機に、総務大臣から各自治体首長に対して、「地方公務員の雇用と年金の接続について」という通知が出されました。

この通知には、定年退職後の無収入期間が発生しないよう、再任用制度の運用を徹底するように、といったものです。

国からの通知(技術的助言)を受け、今ではどの自治体も国のやり方に準じて再任用制度を運用しています。

② 混乱渦中の再任用制度

今の再任用制度の主な目的は、定年退職後の職員が生活に困らないように、無収入期間をなくすことにあります。

ただし、この制度運用に伴う弊害や、現場の混乱も発生しています。

例えば次のような課題が指摘されています。

  • 職員の再任用に伴う人件費の負担増加(若年者の採用に比べて)
  • 「同一労働同一賃金」の考え方との矛盾
  • 給料減額(定年前の60~70%)による職員本人のモチベーション低下
  • 職員本人の職位の逆転による、現場での組織的混乱と戸惑い
  • 定年前までに培った職員の経験やノウハウが十分活かされず「即戦力」にならない。

2 再任用職員をめぐる職場の声

平成28年に千葉市業務改革推進課が行った、再任用制度に係るアンケート(再任用職員450人、現役職員7,200人)からの抜粋を参考までにお示しします。

おそらく、他の自治体での課題に通じるもあると思います。

【再任用職員本人の声】

  • 「勤務成績が給与等に反映されない(昇給ない)ためモチベーションは下がっている」
  • 「(再任用への)気持ちの整理ができていない人のモチベーションが下がっている」
  • 「定年前に経験した業務ならば即戦力となれるが、関係ない業務は正直苦しいと思う」
  • 「そもそも定年延長のつなぎとしての再任用制度には無理がある」
  • 「所属班の一員としてはお客様感がある」
  • 「急速な事務合理化にはついてゆけない」
合理化についていけない職員

【再任用職員を受け入れる現役職員の声】

  • 「元先輩職員なので必要以上に気を遣う」
  • 「業務上の指導・指示が行いにくい。注意しにくい。周囲の職員にも悪影響」
  • 「再任用職員の能力や実績を誰もが納得できるように目に見えるかたちで示してほしい」
  • 「(再任用職員本人の)業務実績に応じた給与を受けるべき」
  • 「再雇用の場の創出につながる反面、若い人の雇用の阻害という側面もある」
  • 「再任用職員の存在により現役職員の業務が増大。モチベーションの妨げとなっている」

なお、この調査は「高齢期の雇用問題」というテーマであるため、総じて厳しい声の方が多いのかもしれません。中には肯定的な意見もありましたので一言添えます。

3 再任用職員の「心持ち」の整え方(提言)

① 本人と職場の戸惑いは ”序列文化の混乱”が原因か

みてきたように、再任用職員本人をとりまく現実は厳しいものがあります。

もちろん、再任用職員として、これまでの知識や経験を十分に発揮して、周囲の職員からも「なくてはならない」存在として頼りにされ、生き生きと働いている職員もいらっしゃると思います。

ただ、再任用職員の離職の多さ(H29「地方公務員の再任用実施状況調査」総務省)からみても、働きづらさに伴う課題も多いように推測できます。

要因の一つには、再任用制度が、役所の従来型の組織風土には馴染まないためではないでしょうか。

従来型の「年功序列」組織の中に、再任用職員は一人異質な存在として、孤立してしまいがちのように思えます。

序列を前提とした組織の中で、現役職員の認知的混乱と指揮命令系統の混乱が生じているのです。

既存の「ライン」型組織の中では、各組織成員(職員)の序列は明白です。

ひとつのグループ内では、班長である「主幹」の下には、「副主幹」、「主査」、「主任」、「主事」、「アルバイト」など、指揮命令関係において認知的な混乱の余地はありません。

この職位序列は基本的に、年収面での序列とも一致しています。

例えばここに、「専門員」という職名での再任用職員が加わることになるとしましょう。

この場合、「専門員」はこの序列においては、どこに位置すると思われますか?

班長の下であることは確かです。ではグループメンバーの中ではどこか?

「給与水準から考えると主任と同格?」「いや、一番下のアルバイトと同格?」などという混乱が、本人及びグループメンバー内で生じがちです。

つまり、「専門員」という「スタッフ」的な職位の性格が、従来の「ライン」型組織の秩序に混乱を与えることになるのです。

先に挙げた「所属班の一員としてはお客様感がある」という声に象徴されています。

再任用職員

このように、指揮命令系統及び現役職員の認知的安定への戸惑いが、様々な問題の一因とも考えられます。

このような難しい環境の中、円滑な業務を進めていくためには、職場のリーダーには相応のマネジメント能力が求められます。

そしてこの難しい課題に、十分に対応できない状況こそが大きな問題ではないでしょうか。

② 自分の「居場所」は自分でつくる覚悟で

再任用職員をめぐる諸問題は、その職員本人の問題だけでなく、もう少し広い視野で認識し直す必要がありそうです。

一方、制度運用上の抜本的見直しには、おそらくあまり期待できないでしょう。なぜなら、

再任用制度が「つなぎ」としての過渡的な性格を帯びているからです。

それではどのような対応がとれるでしょうか。

コントロール不能なものは諦め、コントロール可能な部分で切り抜ける!

この考え方をベースに、極めて現実的な対処法を再任用職員の方に向け、2つご提案します。

提案1 指示待ちでなく「提案型」「問題解決型」で動く

再任用職員は、職場グループ内の序列組織には馴染まない存在であるとお伝えしました。

グループメンバーが「仕事への協力を頼みにくい」「先輩職員には必要以上に気を使う」といった声にもあらわれています。

再任用職員が孤立しやすいといったことの一因かもしれません。

現役職員は、役所の中での序列(上下関係)を前提にして仕事を割り当てられています。

また、実際の仕事を進めていく際にも、上下関係が明確であるほど指揮命令は円滑です。

だからこそ、序列における立ち位置が不明瞭な再任用職員をめぐっては、何かとうまくいかないことが出てくるのは明白です。

このような現実を踏まえ、再任用職員の側も従来とは視点を変えた対処が必要です。

任された仕事をこなすことは当然のこととして、プラスαの動き方も必要です。

仕事に対して受け身の姿勢だけではなく、自ら積極的に周囲へ働きかけてみてはどうでしょうか。

グループリーダーの立場と同じ目線で、時にはグループリーダーを手助けするような心持ちです。

例えば、グループリーダーに対してこのような動き方をしてみてはいかがでしょう。

  • 「この仕事は今後毎年発生するものなので、私が業務手順書を作成しておきましょうか?」
  • 「補助金説明会の運営には細かな役割分担表が必要です。それは私がやりましょうか?」
  • 「先日頼まれた議会答弁の文章校正のついでに、私の方で清書もしておきました」

このような自発的な提案や問題解決への働きかけは、公務員としての長年の知見があるからこそできる振る舞いかと思います。

「再任用職員でもできる」仕事ではなく、「再任用職員だからこそできる」仕事を、自分から提案し、自ら次々と実行していくのです。

職場の中で、自分の「居場所」は自分で見出していくような存在になれれば、きっと周囲もあなたの存在をあてにするようになると思います。

これこそが“キャリアの自律”というものです。

提案2 再任用前には「専門性」を磨いておく

大手企業を中心に、かつての終身雇用や年功序列は崩壊し、職務や能力本位の「ジョブ型雇用」「実績に応じた年俸制」の導入もあたりまえです。

役所でも、従来型の新卒採用だけではなく、専門的な知見を持った人材の中途採用なども普通に行われています。

このように、実力本位の流れはますます加速していくでしょう。

再任用制度は、比較的「ジョブ型雇用」に近いものと考えます。

組織としては、実力を備えた人の即戦力を期待しています。

そして、即戦力であるためには明確な武器、つまりその人ならではの「強み」が必要です。つまり何らかの「専門性」です。

「そうは言っても、私は一般事務職だったので何の専門性もありません」と言われるかもしれません。

でもそれは違います!

専門性とは、必ずしも技術職の職員が持っているスキルだけを指すものではありません。

一般事務職として、これまで、ジェネラリスト公務員としての専門スキルを身に付けてきたはずです。

例えば、資料作成スキル、連絡調整スキル、企画運営スキル、窓口相談スキルなどです。

ぜひ今のうちに、自身の強みとなるスキルを整理し、さらに強化しておいてほしいと思います。

特にパソコン操作などのスキルは、特別に強化しておくことをお勧めします。

いまの若手職員は、スマホ中心の生活のため、意外にパソコン操作が苦手な人も多いようです。

「パワポの資料作成やホームページ更新作業が異様に早いおじさん」などの意外性があれば、きっと一目置かれる存在となります。

プレゼンをする再任用職員

4 雑感

再任用職員が、その知識やスキル、働く意欲や対人関係能力等の点でマイナスの評価を浴びがちです。

しかし、それは表層的な現象面のみを背景にした認識や意見のようにも感じ、再任用職員の立場に立てばやや気の毒に感じられます。

再任用職員の方々が、自分らしく自信と誇りを持って生き生きと働いていくためには、その職員個人の問題としてだけではなく、より社会的、制度的な課題として組織レベルで共有し、対処すべき問題と考えます。



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ABOUTこの記事をかいた人

NORI(ノリ)

元県庁職員でキャリアコンサルタントをしています。公務員の皆さんの"人生戦略”や”キャリアの自律”を応援する記事を書いてます。キャリアコンサルタント(国家資格)、キャリアコンサルティング技能士2級(国家資格)、中小企業診断士(国家資格)、産業カウンセラーの資格は県庁勤務の時に取りました。