公務員としての市民対応のコツ。苦情を防ぐために【若手公務員の方むけ】



こんな課題を抱える現職公務員の方にお応えます。

  • 普段は市民と直接接する職場ではないので、たまにかかってくる問い合わせの電話に苦手意識がある。
  • 窓口に来た相談者を怒らせてしまったことがあり、それ以来、実際の対応場面では身構えてしまう。


この記事を書いているのは、関東地方の県庁で30年間公務員として働き、独立したキャリアコンサルタントです。

県庁では主に産業労働行政の分野で、いろいろなタイプの中小企業の社長さんと直接対応してきました。地域のボランティアでは、自殺防止を目的とした電話相談員の仕事もしています。

普段は市民と直接的に接する場面の少ない職場であっても、市民からの外線電話での問い合わせなどは日常的です。

時には、問い合わせや相談の主旨がよく理解できず、戸惑っているうちに、相手を怒らせてしまうこともあります。

こんなことから、市民との対応に苦手意識を持っている職員さんに向けてお伝えしたいと思います。

もくじ

  • 1 苦情やクレームを防ぐために
  • 2 対応の基本は「キャッチボール」
  • 3 結論だけのまとめ

1 苦情やクレームを防ぐために

① 「期待」−「結果」=「満足度」の公式

苦情とかクレームという言葉あります。これらは相手が何らかのマイナスの感情を抱えた訴えのことを指します。

しかし最初から苦情を訴えてくるケースは少ないものです。たいていの場合、問い合わせや相談から始まるものです。


なので最初の段階で、しっかりした対応ができていれば、苦情やクレームを防ぐことができます。

クレーム、苦情電話を受ける女性職員


仮に、苦情やクレームに至ってしまったとしても、それ以上こじらせないためのコツもお伝えします。

ではどういった場合、問い合わせが苦情に発展しやすいのでしょうか。

カギは、「期待−結果=満足度」という公式にあります。

市民の側の気持ちに沿って見ていきましょう。

私たちは相手と接するときには、たいていの場合、その人に何らかの「期待」をかけますよね。次のような、市民課への問い合わせの例でみていきましょう。

住民Aさんから市役所市民課のB職員へ、こんな電話がありました。

Aさん「介護のためのリフォームの助成金について教えてほしいのですが。うちの場合使えるのか、自己負担はいくらかかるのか・・・。」

B職員「申請書類は市民課のホームページからダウンロードできます。この手続書類をよくお読みになって、必要な添付書類を揃えてから、毎月10日の締め切り日までに、簡易書留で市民課までご郵送ください。」

Aさん「は、はい・・・・・・わかりました。」

「家のリフォーム費用の一部助成の制度を教えてほしい。自分に当てはまるのか・・・・」という相談内容でした。これがAさんの「期待」でした。

B職員の対応に、Aさんは少し戸惑いながら最後には諦めてしました。

市民課職員のBさんは、Aさんの「期待」に的確に応えられなかった様子です。

これが「結果」です。

「期待−結果=満足度」の公式に当てはめてみます。

当初の「期待」の大きさに比べて、「結果」の大きさの方が小さくなります。

なので、その差である「満足度」はプラスではなく、マイナスになってしまいます。

まさにこのような場合、当初の問い合わせが、不満という「苦情」に変化してしまいがちなのです。

市民課職員のBさんが、Aさんの「期待」に応えることができなかった「結果」が「苦情」発生のきっかけになります。

② 「期待」の内容をしっかりとつかむ

問い合わせを「苦情」にしない相談対応のコツはたった一つです。

最初が肝心です。Aさんの、 ”当初の「期待」の内容をできる限り正確に理解する” ということです。

なぜなら、ここでのボタンの掛け違いがあると、その影響を最後まで引きずってしまうことになるからです。

B職員が、Aさんの「期待」を正確に把握できなければ、それに応じた「結果」は得られず、「満足度」はマイナスです。


先ほどの例では、たとえBさんがリフォーム制度の申請手続きだけをいくら説明したとしても、Aさんの満足は得られないでしょう。


特に相談対応に十分慣れていなかったり、苦手意識のある人の場合、つい早合点してしまいがちで、自分の側の視点を優先して、話を進めてしまいがちです。

Aさんの「期待」は、申請手続きの内容を詳しく知りたいことよりもむしろ、「私はこの助成制度が使えるのか」ということがポイントだからです。


相手の、本当の「期待」、つまり真のニーズはどこにあるのか、日頃から正確につかむように気を配ることが大切です。

2 対話は常に「キャッチボール」で

① 相手の「期待」を ”キャッチ” する

テニスでも卓球でもなく、対話は「キャッチボール」が基本です。

どこが違うの?

テニスや卓球の場合には、相手の球を ”キャッチ” することなく即座に打ち返しますよね。

キャッチボールは、まずは ”キャッチ” する。

つまり対話の場面では、相手の球、つまり「期待」を、いったん、しっかりと受け止めるひと手間が大事なのです。

キャッチボール方式で対話する職員

「期待」の理解が不十分なまま、早合点して投げ返してしまうと、相手はその球をうまくキャッチすることもできません。

② 受け取りやすい球の工夫

 球を投げ返す時のコツはこんなことです。

キャッチボールでは、相手がキャッチしやすいよう、ストライクゾーンに球を投げ返してあげるものですよね。

市民との対話の場面でも、ぜひそれを心がけてみましょう。

ではどんなふうに?

市役所職員Bさんによる、Aさんとの相談対応の場面に戻りましょう。

Aさんの本来の「期待」は、役所の助成制度の要件が自分にも当てはまるのかを知りたいといったことでした。

しかし、気が焦ってしまったBさんは、助成制度の要件説明に終始してしまっている様子です。

Aさんは、「自分にもこの助成制度は使えるのか」という回答が得られずに、戸惑っています。

このままではいけません。軌道修正が必要です。

つまり、B職員の対応は、「キャッチボール」ではなく「テニス」なのです。

B職員は、Aさんの「期待」をしっかりと ”キャッチ” しないまま、即座に打ち返してしまっています。

しかもB職員は、Aさんが受け止めづらい球を打ち返してしまっています。

テニス方式で対話をする職員

では「キャッチボール」の場合、どのようになるか。実際の会話例で見てみましょう。

Aさん「介護のためのリフォームの助成金について教えてほしいのですが。うちの場合使えるのか、いくらかかるのか・・・。」

B職員「リフォーム助成金のことですか。いろいろご不安なのですね。A様が実際に使えるか、ご負担額などについてのお尋ねでしょうか?」

Aさん「はいそのとおりです。」

B職員「では、まず助成金制度の概要をお話してから、A様がお使いになれるかどうか、ご負担額がどのくらいになるか、少し状況をお聞かせいただき、それから申請手続きのご案内をさせていただくという手順でよいでしょうか?」

Aさん「はいぜひお願いします」

B職員は、Aさんからの球である「期待」内容をしっかりとキャッチしているのがわかるでしょうか。

そして、B職員は、自身が理解した「期待」内容を、そのままいったんAさんに投げ返しています。

Aさんは、B職員が理解した内容が、自分自身の「期待」内容と同じであることを確認し、「はいそのとおりです」とBさんに投げ返しています。

B職員は、自分の理解が正しいことを確認した上で、Aさんの「期待」を正確にキャッチしながら、ていねいな対話を進めています。
きっと、これで対話はうまく進んでいくことでしょう。

キャッチボールでの対話

ここでB職員がやっていることは、「要約」「明確化」と呼ばれているコミュニケーション技法の一種です。ご興味があれば、カウンセリングにおける傾聴技法についてぜひ学んでみてください。

3 結論だけのまとめ

冒頭の疑問にお答えします。

最初は問い合わせや相談であったものが、何らかの理解の行き違いから「苦情」に発展することも少なくないものです。

何事も最初が肝心です。

たとえ何気ない問い合わせや相談であっても、まずは目の前の相談者の気持ちや相談の主旨をしっかりと伝え返して確認するというひと手間が大切です。

相談者への回答やアドバイスを急ぐ前に、まずは相談者の相談内容を「要約」「明確化」して伝え返すというひと手間を踏むことが大事です。

日常の親しい間柄では、この「要約」や「明確化」を省いたとしても支障がない場合が多いものです。多少の行き違いがあったとしても、それほどこじれることもないでしょう。

一方、市民との対応場面では、外国の方をはじめ、実にいろいろな価値観や背景を持った人たちと、初めて接することが多いものです。

そんな場合には、せひ「キャッチボール」のイメージを持って、正確でていねいな意思疎通を心がけたいものです。

(追記)市民の方々はたいていの場合、役所に対して、あまり大きな期待を持っていないものです。「どうせ役所だし!」「役所ってとかく形式ばかりで事務的でしょ!」といった印象です。そんな時、職員が何気ない市民からの相談ごとや不安な気持ちに、深い思いやりを寄せ、有益なプラスαの情報提供もしてあげたとしたら、どうでしょう? 「期待」をはるかに上回る「結果」は、”感動”といった「満足」をもたらします。役所への期待がさほど大きくないからこそ、意外な「結果」が大きな感動的ともいえる満足を生むのです。「スーパー公務員」と呼ばれる職員たちは、日々このような仕事をしています。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ABOUTこの記事をかいた人

NORI(ノリ)

元県庁職員でキャリアコンサルタントをしています。公務員の皆さんの"人生戦略”や”キャリアの自律”を応援する記事を書いてます。キャリアコンサルタント(国家資格)、キャリアコンサルティング技能士2級(国家資格)、中小企業診断士(国家資格)、産業カウンセラーの資格は県庁勤務の時に取りました。